フルーティストとして有名なハービー・マンのリバーサイドでのアルバムです。
実はハービー・マン、フルートは吹いていません。全編バス・クラリネットを吹いています。バスクラといえばエリック・ドルフィーですが、彼より以前にこの楽器でしかもアルバム1枚全部バスクラというのはハービー・マンだけです。
ハービー・マンはもちろんフルートで有名ですが、ちゃんとジャズをやっていた頃は(彼のファンに怒られそう)テナー・サックスなども吹いたマルチ・リード奏者です。サヴォイなどにも彼がテナー・サックスを吹いたアルバムが残っています。
白状しますと僕このアルバムを聴いたのはつい最近です。カタログに載っているのは知っていたのですがこのダサいジャケットと意味深なタイトルで全然聴く気が起こらなかったからです。たまたま中古CDで入ってきて、きなしにトレイにのせたところ出てきた音は「GOOD」でした。良質なウエストコースト・ジャズです。メンバーもみんな腕達者な連中ばかりです。つーわけで急遽レコメンド決定してしまいました。
ニューヨークでデビューしたハービー・マンですが、54〜57年の間西海岸で活動していました。このアルバムはリバーサイドとしては珍しくウエストコーストで録音されたものです。
全編バスクラということで多少の不安はあったのですが、ジミー・ロールズ以下のリズムセクションのスインギーな伴奏にのり、フロント二人が快適なソロを聴かせてくれます。
しかも5をのぞきすべてがスインギーなナンバーばかりです。この難しい楽器でこのようなスインギーなソロは難しいと思うのですが、なんの破綻もなく快適にソロをとっています。またこのバスクラの音色が不思議な魅力を醸し出しています。
1はマイルス・デイヴィスの有名なテーマです。
2はタッド・ダメロンのオリジナル、バルネ・ウイランの名演が思い出されます。
3〜5はスタンダードナンバー。5のバラード。で、暖炉のほわっとしたような暖かいさを感じさせるハービー・マンのバスクラが印象的です。
6はハービー・マンのオリジナルです。
バスクラということで、なんか重たくもったりとしたイメージがあったのですが、茫洋としたサウンドながらふんわりとスイングするハービー・マンのソロは気持ちもふんわり柔らかくなるような不思議な心持ちです。この特徴が良く出たのは5「A HANDFULL OF STARS」ではないでしょうか。低音をいかして実にウォームなソロです。ジミー・ロールズもエレガントなソロで応えてくれます。
このグループのもう一人のフロント、トランペットのジャク・シェルドンはウエストを代表するトランペッターの一人です。ズート・シムスとの共演でも有名です。ジャック・シェルドンのトランペットは中音域を活かしたハスキーなトーンが印象的です。チェット・ベイカーを代表としてウエストのトランペッターは概して中音域をつかったハスキーなプレーヤーが多いのですが、ジャック・シェルドンもその一人です。
チェット・ベイカーのような愁いを持ったサウンドではありませんが、とにかく明瞭にスイングするソロは聴いていてじつに気持ちの良いものです。特にミディアム・バウンス以上のテンポの時のソロは大変好ましいものがあります。このアルバムでも5をのぞき彼の得意なテンポの曲ばかりで、2「LADY BIRD」のソロなど小気味にスイングしていて気持ちよいです。
そしてジミー・ロールズ。実に地味な存在ながら山椒は小粒でもピリっと辛いを地で行くようなピアニストです。このアルバムでもその特徴を活かしたイカシたソロをとっています。
なおボーナス・とラックの7「BLUES FOR TOMORROW 」ですが、この曲がなんで入ったのか疑問でした。この曲は同名のアルバムに収められたのですが、このアルバムはリバーサイドの落ち穂集のアルバムでいろんなアルバムの未発表分を収録したものです。
このCDのクレジットにはこの曲を収録したことにより1957年7月3日のセッションが初めて完全に収録したアルバムとなったとあります。しかし実はこの曲ではなく「A SAD THING」を収録しなくてはならなかったのです。たんにアメリカの編集者のミスです。しかしそのまま発売してしかも訂正しないのはさすが(?)アメリカですね。なおこの「BLUES FOR TOMORROW 」ですが、有名な「MONK'S MUSIC」のセッションのセロニアス・モンク抜きのセッションです。演奏が悪くないんで困っちゃいますけど(^_^;)
ほとんど取り上げられることのない「Great Ideas of Western Mann 」ですが、ハービー・マンの隠れ秀作としてオススメです。
KOBAに騙されたと思って聴いてみてください。きっとライブラリのいちばんいいところに入りますよ。(ニヤリ)
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