ビバップの時代から活躍しているトランペッター、ケニー・ドーハムの初リーダーアルバムです。
このとき29歳ですからリーダー・アルバムとしては遅い方だと思います。ただしサイドメンとして様々なセッションに起用され、ハードバップの王道を行くミュージシャンの一人です。
ケニー・ドーハムの特徴は、中音域をいかしたリリカルなプレイにあります。彼がマイルスの後がまとしてパーカーのクインテットに参加したのも、パーカーがマイルス風なウォームなサウンドのトランペッターを必要としていたからです。
ドーハムはクリフォード・ブラウンのように華麗なテクニックを駆使してバリバリとソロを展開するタイプではありません。
テクニック的には少々劣るもののウォームでブルーな表現が信条のプレーヤーです。
ソロにおいてはミストーンがかなり多くあります。ただそれがほほ笑ましく聞こえるのは、彼のソロが心暖かいものであるからでしょう。
また急速調のナンバーよりミディアムスイングぐらいのナンバーに彼の良さが良く現れていると思います。
その意味においてこのアルバムがバラードを中心にミディアム・スイング以下のテンポのナンバーで構成されたのが成功の要素だと思います。ドーハムのソロは若干ぎこちなさがあるものの、彼の特徴であるブルーでウォームなものとなっています。
ソロにおいてはマイルスの影響を感じますが、「QUIET KENNY」に通じるブルーな味わいがあります。モンクの名曲「RUBY MY DEAR」に見せるブルーな雰囲気はケニー・ドーハム独特なものです。また7,8の「DARN THAT DREAM」は上記「QUIET KENNY」を彷彿とさせるソロです。ただベストトラックはやはり1「AN OSCAR FOR OSCAR」、5「OSMOSIS」の2曲でしょう。
1はドーハムのオリジナル、5はドラマーのオシー・ジョンソンのオリジナルです。これらの演奏はまさにもうハードバップですね。ビバップよりメロディックでグループとしてのまとまりもある演奏です。ただ残念なのはジミー・ヒースがこれ以外の曲では伴奏に徹してソロを取らないことです。多分にバラードとそれに準ずる曲だったためかと思われますが。
ハードバップ前夜の1953年の録音で10インチというフォーマットも手伝って地味な存在のアルバムとなってしまいました。なおこのアルバムには3曲の未発表セッションが収録されています。10,11のケニー・ドーハムのヴォーカルは何も言う必要もないのですが、合間のソロはなかなかのものです。
ドーハムはリバーサイドに全編ヴォーカルのアルバムを残していますが、まあトランペッターで良かったですね。ライナーによると実はヴォーカリストとしてデビューしたらしいです。まあ早くあきらめて正解ですね。
ハードバップのスタイリストの一人、ケニー・ドーハムの若々しいプレイが詰まったアルバムです。
深夜、一人静かに聴いてください。
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