モダンジャズ史に残るエリック・ドルフィーとブッカー・リトルの火を噴くようなライブ。
エリック・ドルフィーという真に偉大なプレーヤーは生前その実績に見合うだけの評価を得られぬ まま64年にベルリンで客死してしまった。彼はチコ・ハミルトンのグループに参加してから6年、NY進出からたった4年という短い期間で走り去ってしまった。
エリック・ドルフィーはオーネット・コールマンに大いなる影響を受け、彼がメジャーデビューする前ロスで盛んに二人は交流していた。多分二人の目指していたところは同じだったかもしれない。しかし大きな違いはオーネットの調性からの逸脱も辞さないアブストラクトな表現にたいしてドルフィーは調性の枠内でのアブストラクトな世界の創造といった点かと思う。事実ドルフィーはパーカー以来のコード進行に基づいてソロを行った。
エリック・ドルフィーの驚くほど素早いパッセージで語られるアルトサックスのソロを「馬のいななきのようだ」と言う場合がある。彼のソロは実に攻撃的でドラマチックだ。バスクラリネットは暴力的でさえある。フリーではないがフリー派の範疇に入れられるのはこういった点だろう。オーネットとの中間に位 置する存在と捉えると理解しやすいかもしれない。
しかしエリック・ドルフィーのフルートはまったく別 の趣がある。そのソロは素直に「美しさ」に感動できるのだ。特にラスト・デイトでのフルートの演奏は「極限の美」と形容できるほど壮絶な美しさであった。
自己の極限までの探究、その闘いの末にエリック・ドルフィーは36才という若さでベルリンで客死してしまった。
僕がこの「アット・ザ・ファイブ・スポット」を初めて手にしたのは高校1年の時だ。最初の1曲をかけたとたんスピーカーから飛び出してきたバスクラリネットの異様な音にもうビックリしてしまった。ただあ然としていた。初心者の僕にとって見れば「なんだこりゃ」である。我慢しながら聴いていくと「LIKE SOMEONE IN LOVE」のフルートで一息、「FIRE WALTZ」の三拍子に何となくスイングした。でも他の曲はちっとも解らなかった。ただ演奏直前の会話などがひどく新鮮でジャズを感じた。その頃は持っているレコードが極端に少なかったから度々ターンテーブルに乗った。主に聴くのは前述の2曲だがとにかく目をつぶりながら必死にソロを追いかけていた。だからこのアルバムの真の姿は理解できていなかった。でもなんかこのアルバムには惹かれる物があり、僕のフェイバリット・レコードになった。
社会人になって松本に戻り地元のジャズ喫茶でたむろしていた頃マスターに「なんかフルートのいいやつかけてよ」とリクエストしたらこの「LIKE SOMEONE IN LOVE」をかけてくれた。久しぶりにこのレコードを聴いてドルフィーのフルートのすごさを初めて実感した。これを新たな出発点として僕とドルフィーの付き合いがまた始まったみたいだ。耳をつんざくアルトの咆哮、一転したフルートの美の世界。モダンジャズの伝統的な手法の中でアブストラクトな世界を抽出した名盤だ。
なおもう一人のリーダー、ブッカー・リトルの存在がこのアルバムの価値を高めている。どんなに早いパッセージを吹いても乱れることのないソロは特筆すべきである。また「LIKE SOMEONE IN LOVE」での美しいオブリガートも忘れがたい。この録音の3ヶ月後に26才の若さで急死したのが悔やまれる。
最後にドラムのエド・ブラックウエルの絶妙なドラミングもこのグループの重要なファクターだ。
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