ジェリー・マリガンとセロニアス・モンクのスリリングな共演!
ジェリー・マリガンといえば第一にチェット・ベイカーと組んだピアノレス・カルテットが有名です。ディキシーの手法をモダン・ジャズに適用したアレンジが新鮮な響きを与えてくれました。あのピアノレス・カルテットはチェットの瑞々しいトランペットとマリガンのバリトンとの対比が素晴らしくクールでした。
さて本アルバムですが最盛期のモンクとバリトンの第一人者として自他共に認める存在のマリガン、二人のジャズ・ジャイアンツによるアルバムです。
自己の世界に固執するモンクはある意味で共演者泣かせです。そのことはマイルスとのクリスマス・セッションでマイルスが「俺のソロのバックでは弾くな」といったことでも有名です。
モンクとマリガンのこのアルバムはモンクがコルトレーンを従えてファイヴ・スポットに出演していた時であり、モンクの全キャリアを通して最盛期の録音です。
モンクの音楽の魅力の一つに構成美があると思います。彼の作品は彼の個性的なスタイルでのみ語られる事が多いですが、実は録音前からかなり綿密に構成が練られているのです。ブルーノートの40年代の作品もそうですが、リバーサイドでリリースされた作品もかなり細かいところまでモンクの指示があったようです。そういう意味においてモンクの他流試合は成功例がすくないのです。
マリガンの場合も協調性が高いように見えて自分のペースは守り抜くところがあり、共演者によっては最終的にマリガンの個性だけというように聞こえる場合が多々あります。
そんな二人の共演、またプレイスタイルもまるで違う二人の共演ということで興味津々で聴いたのですが、お互いの個性が相手を触発するという理想的な形になったのではないでしょうか。
特に「ROUND MIDNIGHT」はすばらしい出来です。緊張感の漂うソロの交換となっています。特にマリガンのソロが一旦終わったかのように聞こえたあとの二人のやり取りが面白いです。モンクとマリガンは会話をしているようです。この後のモンクのソロが実に美しいです。
モンクとマリガンは曲によって相手のソロのバックでコードをつけたり、まったく何もしなかったり使い分けています。
「RHYTHM-A-NING」は比較的テンポを速くしています。モンクが積極的にマリガンのバックにフィルインしています。ただモンクのソロの後半でマリガンと掛け合うところはちょっとタイミングがうまくいかなかったようです。
「SWEET AND LOVELY」は唯一のスタンダードです。ただこれもモンクの愛奏曲です。比較的古風な演奏ですが、マリガンがマイペースでソフィスティケートされたプレイを展開し、モンクのピアノも刺激されてさえています。
「STRAIGHT NO CHASER」ではモンクのバックでマリガンがプップップとソロの行き先を指示しているような吹き方をしています。それにはポーカーフェイスでソロを展開するモンクがほほ笑ましいです。
「I MEAN YOU」はいつもより少しだけ明るいモンクがいるようです。ソロが楽しげに聞こえます。マリガンのスイング感がモンクに伝わったのでしょうか。
ただマリガン作曲の「DECIDEDLY」はモンクが戸惑っているように聞こえます。マリガンに敬意を表してマリガンの曲を入れたのでしょうが、すべてモンクゆかりの曲で通した方がベターだったと思います。
3曲のボーナス・トラックが収録されていますが、テイクによるソロなどの違いはあまりありません。全体のアレンジは多分マリガンだと思います。
今は亡き二人のジャズ・ジャイアンツによるスリリングな共演をお楽しみください。
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