アート・ペッパーのソロが冴えるビッグバンドの傑作!
アート・ペッパーの活動期は前期と後期に分けられます。前期はデビューから1961年まで、後期は1975年復帰からその死までです。ファンにより前期派と後期派に分かれます。後期ペッパーファンは前期に見られなかったモーダルですべてを搾り出すようなハードなプレイに感動し、前期のファンはスイートで流麗なソロに心酔しています。僕はどちらかというと前期派です。彼の魅力は流麗で尽きる事無くわき出る泉のようなメロディにあると思います。
さて今回の作品ですがサブタイトル「A TREASURY OF MODERN JAZZ CLASSICS」にあるとおりモダンジャズ・オリジナルのショーケース的なアルバムです。
有名なオリジナルがずらっと並んでいます。もちろんアレンジはアート・ペッパーを知りつくしたマーティ・ペイチです。なぜかピアノはラス・フリーマンです。
「MOVE」はデンジル・ベストのオリジナルです。マイルスの有名な九重奏団による「クールの誕生」で使われました。
「GROOVIN HIGH」はバップ・トランペットのキング、ディジー・ガレスピーで有名な曲です。
「OPUS DE FUNK」はホレス・シルバー作曲、ミルト・ジャクソンのアルバムで有名です。
「ROUND MIDNIGHT」はもちろんモンクの有名なナンバー。
「FOUR BROTHERS」はジミー・ジュフリー作曲、ウディ・ハーマン楽団で大ヒットしたナンバーです。
「SHAW NUFF」「ANTHOROPOLOGY」「DONNA LEE」はパーカー作曲のバップ・クラシックスです。
「BERNIE'S TUNE」「WALKIN' SHOES」はジェリー・マリガンのオリジナル・カルテットでの演奏で有名です。
「AIRGIN」はロリンズのオリジナルです。
「WALKIN'」は言わずとしれたマイルスのアルバムのタイトル・チューンで作曲はリチャード・カーペンターです。
録音当時ペッパーはほとんど仕事がなく、マーティ・ペイチがソロイスとしてたびたびペッパーを起用していました。またコンテンポラリーの社長レスター・ケーニヒも彼を助けるためにレコーディングの機会を与えていました。このあたりの話はペッパーの自叙伝「ストレート・ライフ」に詳しく載っています。
マーティ・ペイチによるとこの頃よりペッパーはロングソロがだんだんととれないようになってきたようです。麻薬と過度の飲酒により荒んだ生活を送っていたようです。ただし短いソロならば光り輝くものがあり、それだけが彼を支えていたようにおもわれます。
その意味においてこのアルバムはマーティ・ペイチの壺を心得たアレンジと短いソロにすべてを凝縮させたペッパーのプレイとでビッグバンドジャズ出色の作品となりました。またバックを支えるメンバーもウエスト・コーストのトップ・アーティスト達です。
それから特筆されるのはアート・ペッパーがアルトの他にテナーとクラリネットを吹いていることです。僕的にはペッパーのクラリネットが思いの外素晴らしいものでした。
なお11〜13における「WALKIN'」の3つのテイクはオリジナル・テイクがテナーによるもの、別テイクがクラリネットによるものです。その聴き比べも非常に面白いものがありました。
マーティ・ペイチの粋なアレンジの合間を駆け巡るペッパーの珠玉ソロ、すべてのジャズファンに聴いて欲しいビッグバンド・ジャズの傑作です。
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