ハンプトン・ホースの駄盤(?)といわれた一枚は僕のお気に入りの一枚です。ハンプトン・ホースはカール・パーキンスと並んで、ウエストで活躍した数少ない黒人ピアニストです。
彼の魅力は何といってもブルージーな味わい溢れるプレイスタイルです。ブルース弾きとして有名な彼ですが、コンテンポラリーの諸作ではインティメイトなアルバムが多いです。
彼は生涯のほとんどをピアノ・トリオでプレイしています。コンテンポラリーにはギターのはいったカルテットの人気盤「ALL NIGHT SESSIONS VOL.1-3」もありますが、これも基本的にはピアノ・トリオの延長線上にあると言えます。
そこで今回の「FOR REAL !」ですが、珍しく管とくんだカルテットです。
僕とこのアルバムとの付き合いはそんなに古いものではなくオリジナル盤に目覚めた1990年ごろからです。
なぜこのアルバムを聴かなかったかといいますと、昔ジャズ雑誌の批評でハンプトン・ホースの作品の中ではランクの下の駄盤という評価があったため、レコード屋へ行っても手が伸びないまま何年も経ってしまったというわけです。
この評価の裏にはアメリカで発売当初、ダウンビートの評価で低い点をとったためと思われます。それを日本の評論家が鵜のみにしたのではないでしょうか。
ただ90年ごろハロルド・ランド(ts)にほれ込んでいて、彼のアルバムを集めていました。その関連でこのアルバムを聴いたのですが「どこが駄盤だあ〜!!」と声を上げたくなりました。
ぶつぶつとしたピアノのペック奏法とでも呼びたいようなホースの独特のフレージングと、ハロルド・ランドのゴリっとした風合いのテナー・サウンドの対比がこのアルバムのハイライトです。
一聴ホースのソロはテクニカルなもではありません。しかし一音・一音を選んで最小限の音で自分の世界を作り上げ、ジャンプしスイングしています。
ハロルド・ランドも生涯のほとんどをウエストで過ごしたため過小評価されています。彼のテナーはゴリっとしたサウンドではありますが、じつにスムースで良く歌うソロを展開します。
ブラウン=ローチ・クインテットでのプレイでそれは証明されています。あのグループではロリンズよりハロルド・ランドの方が出来は上です。
またスコット・ラファロのベースがこのグループをしっかり支えています。
彼のプレイはビル・エヴァンスとのアルバムでのプレイばかり脚光をあびていますが、本来の彼のベースは太くてたくましいのです。ここでもその太いベースが存分に聴けます。
またフランク・バトラーの地味ながら適切なバッキングも忘れてはなりません。アート・ペッパーのアルバムでも彼のドラムは光っていました。僕の好きなドラマーの一人です。
このアルバムの1曲を選ぶなら「WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS」でしょう。フランク・シナトラの名唱でもしられるこの曲は結構ジャンプナンバーとして取り上げられることが多いです。
ハンプトン・ホースのアレンジでレイジーでブルージーな作品に仕上がりました。ハロルド・ランドとホースが絡み合うイントロから続くランドのソロは、たくさんの音を使いながらも、この曲を慈しむようなソロです。その後のホースのソロがじつに素晴らしいです。ピアノ・ベース・ドラムスが三位一体になってソロが展開されていきます。ホースのソロはかなり考え抜かれたものではないでしょうか。選ばれた音に力強さを感じます。再びランドのソロになるのですが、ホースのコンピングが素晴らしい効果を上げています。
最後にエンジニアのロイ・デュナンに一言。本当に素晴らしい録音です。東がヴァン・ゲルダーなら西はロイ・デュナンです。あらためて認識しました。
なおこのアルバムの録音は1958年ですが、リリースは61年です。レスター・ケーニヒがこの年に自動車事故で亡くなったスコット・ラファロの追悼アルバムとして発売したものです。
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