ズート・シムスの未発表音源です。しかも1956年といえば彼がもっとも充実していた年です。次々と素晴らしいアルバムをリリースしています。
しかし驚いたことに全編アルト・サックスを吹いています。テナーマンとしてのズートは定評がありますが、アルト奏者としてはどうなんだろう?といぶかる方もいらっしゃるでしょう。
ところがズートは以外とマルチなプレーヤーでABCパラマウントに「プレイズ・アルト・テナー・バリトン」「プレイズ・フォー・アルト」といったアルバムを残しています。70年代以降はソプラノサックスにも独特の味わいを出していました。
ただし前記のパラマント盤は多重録音による演奏であり、今回のアルバムはワン・ホーンでの録音というズートにとって最高のシチュエーションとなっています。
なぜ当日アルトサックスなのか?これはわかりませんがプライヴェートなセッションということでズートがアルトサックスを試してみたのか、またはテナーがなくて誰かのアルトサックスで吹いたのか。ちょっと謎ですね。
僕としては録音の日がエイプリル・フールということでズートの粋な冗談とみたいです。
収録8曲中5曲がスタンダード、3曲がピアニスト、ジョー・カストロのオリジナルです。
さてズートの未発表音源しかもインティメートなセッションということで期待大でトレイに乗せました。
スピーカーから出てきた音はまさしくズートの音でした。しかもズートが大変リラックスしてこのセッションを楽しんでいる様子がわかります。
ナンバーもズートの手慣れたもので、3曲のオリジナルもリフ・ナンバーでズートにぴったりです。
アルトサックスですが、展開されるソロはまさしくズートのスインギーなソロです。音色もズートのものです。
ソロのメロディが尽きることなく次から次にわき出てきます。1956年のズートは別格ですね。
どの曲も甲乙つけがたいのですが、スタンダードではポール・デスモンド程ではないのですが澄んだ音色の暖かいソロです。
オリジナルの3曲ではテナーばりの音色でああズートだと首肯させるソロになっています。
アルトということで若干高目の音のためかいつもより軽くスイングしているように聞こえました。デュクレテのような哀愁あるサウンドより、明るいウエスト・コーストのサウンドになっています。
こういった演奏聴かされるとアルト奏者としてのズート・シムスの他のワンホーンが聴きたくなります。無い物ねだりですが。
プライヴェート・セッションといことでバランスが部分もありますが、それを吹き飛ばすズートのソロが圧巻です。
このセッションは「FALCON LAIR」というジョー・カストロが住んでいたアパートでの録音です。彼の持っていたアンペックスの古い録音機とテレフンケンのマイクで録音されたとあります。なおリマスターは彼の息子のジェームス・カストロです。
まだ彼のアパートで録音されたものがあるらしいので期待したいです。
ピアニスト、ジョー・カストロですが、ライトハウス・オール・スターズのピアニストとして活躍しました。テディ・エドワースのグループなどロス中心に活動しています。
なんか少しもたつく指使いが面白い効果をあげています。ハンプトン・ホースの影をちょっとだけ感じました。
ベースはウォーキング・ベースの名手リロイ・ヴィネガーです。ここでも彼のウォーキング・ベースを堪能できます。
アルト奏者としてのズート・シムスを再評価する重要なアルバムです。
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